『テイルズ オブ アライズ』やりました？
めちゃくちゃ面白かったです。シリーズNo.1の作品だったという方も多いんじゃないかなって思います。僕はアーチェさんが可愛い『テイルズ オブ ファンタジア』が一番だと周囲に振りまいていたので、大きな声ではNo.1とはいえませんが、かなりレベルの高い作品だったと思います。
アライズは、バトルシステムが凄かったです。いつもの特技はもちろん。好きなタイミングで出せるキャラ固有のブーストアタック。ヒットを稼いで出す大技ブーストストライク。特技出し放題のオーバーリミッツ。オーバーリミッツ中に発動できる必殺技の秘奥義。バトルの奥深さと爽快さといったら、テイルズシリーズでもぶっちぎりです。
アライズは、魅力的なパーティキャラクター達ばかりです。バトルメンバーを悩むだけで貴重な人生の時間を浪費してしまいます。
なかでも、キューティクルなロングなピンク髪、女神のような露出多めなフリフリの衣装、細身で巨乳なスタイルの良さであざとさの塊な見た目でありながら、性格はかなりドライのシオンちゃんに心を奪われた人も多いことでしょう。
シオン萌え〜。
ピンク髪ツンデレ萌え〜。
意外と大食いで料理が上手くなりたいギャップ萌え〜。
と久方ぶりに萌え豚になりつつも、僕は途中から人としての理性を取り戻して、純粋には楽しめなくなっていました。欲にまみれた豚の思考の闇の中で、リアル世界のある女性の影がどうしてもチラついてしまったからです。
僕の職場は工学系の企業であることもあり、８割以上が男性社員です。女性は各課に数名いる程度です。女性陣は少数派であるため、一枚岩で手を取り合って男性社会に立ち向かっている……と思いきや、男性陣よりも派閥争いが続いており、三国志のような激闘の時代を生きています。そして、我が職場にも、乱世の奸雄とも称された事務職の女性がいます。勤続年数は30年を超えており、僕は彼女をシオンならぬ、ヌシオンと呼んでおります。（以降彼女のことはヌシオンと記載します）
三国志の英雄・曹操が若い頃に「治世の能臣、乱世の奸雄」と評された。「安定した世の中ならただの優秀な役人だが、乱れた世の中なら天下に名を轟かせる」といった意味。
ヌシオンは真面目で正義感が強く、ステレオタイプで気位が高く、茶髪でツンデレの50代独身女性です。アライズをプレイしたことで、僕はヌシオンがレナ人の特徴と一致することに気がついてしまいました。
僕がダナ人のごとく奴隷のように働かされる職場環境の割に、ヌシオンの業務負荷があきらかに低いのは自明でした。ここはメナンシアのような奴隷とはわからないギリギリのラインでダナ人をこき使う領将（スルド）が支配する世界だったのです。
惑星レナの住人であるレナ人は、ダナ人に星霊力を取得する石を埋め込み奴隷として働かせています。レナ人は自分でつけさせておきながらダナ人のことを「石付き」と揶揄します。逆にダナ人は、星霊術を使用する際に目が光るレナ人のことを「光り目」と嫌っています。レナ人の中でも特に星霊力が高く、ダナ人の奴隷地域を統治する人物を領将（スルド）といいます。
ヌシオンは能力も低ければ、努力もしません。しかしながら、その自己肯定感の強さからか職場では大きな星霊力を持っています。パワハラ気味の課長ですら、ヌシオンには強くあたることはできません。そこから、ヌシオンはかなりの闇の星霊術の使い手であることがわかりました。また、星霊術にかかわらず、単純に人当たりがきついことが多いです。事務職なのでどうしても雑用を頼まざるを得ないのですが、ヌシオンは度々「正確に指示してくれないとわからない」と眉間に皺を寄せ、仕事ができるような顔をして目を光らせてきます。レナ人特有の「光り目」であることが見てとれます。ヌシオンは専門学校卒業後30年以上同じことをしてるのに、まだ指示が必要なのでしょうか。あるいは、イライラさせることで、ダナ人である僕から星霊力を吸い上げているのでしょうか。というか、それ以前にヌシオンは単純作業もしてくれないことが多いです。資料のコピー頼んでも、普通に断られることも頻繁にあります。事務とはなんだろう。ヌシオンはいつも僕に哲学的な問いを投げかけてきます。
ヌシオンは、飲み会でも波乱を巻き起こします。正義感が強くプライドが高く、自分が間違っていると思った意見は最後まで貫抜き通すため、雰囲気が悪くなったり喧嘩っぽい空気になったりします。また、姉御肌で涙もろい一面もあるので、結構飲み会中に相談にも乗ってくれたり、感極まって泣いたりします。僕もダナ人という奴隷として、「責任重いし、怒られるし、資格とか取れというくせに残業ばかりさせてくる。」とつい種族の壁を超えて相談してしまったこともありました。ヌシオンは「私もそれぐらい鍛えてほしかった。君は恵まれてる。もっと働くべき」と星霊力のさらなる献上を要求してくるのです。そして、最終的に「私と君は同じタイプなのかもしれない」と謎の締めくくりをされてしまいました。
同じタイプとはなんだろう？
ジョジョ第３部のスター・プラチナとザ・ワールドのように同じタイプのスタンド的な意味なんでしょうか。ただの高校生の承太郎に追い詰められる不老不死のディオの気持ちがよくわかります。「なぜ人間如きが私と同じ種類のスタンドをもっているのだ！」とディオは驚くとともに悲しい気持ちになったでしょう。僕はヌシオンよりだいぶ働いているのだから、ひとくくりにされてしまうのはとても悲しい気持ちになりました。
さて、流れるようにヌシオンへの愚痴を綴りましたが、僕はヌシオンのことが完全に嫌いなわけではないです。
ヌシオンは単純に純粋で真っ直ぐな人なのです。ゲーム内でシオンは、触れるものに激痛をもたらす荊（イバラ）の呪いがかけられており、彼女はそれが原因で人間不信な面がありました。シオンは唯一彼女に触れることのできる痛覚を持たないアルフェンとの出会いから人との関わり方を学んで成長していくことで、思いやりのある本来の姿を表に出せるようになっていきます。ヌシオンも同じです。お局感が強くて、他人に嫌われやすいけど、根源な部分では純粋で真の通った良い人なのです。ただ、ヌシオンの場合は、アルフェンと会うことがなかったため、荊が取り除かれることもなく思いやりを取り戻すこともなかった世界線の30年後のシオンなのである。
ヌシオンは「そろそろ結婚しようかな」と言っていました。周囲の皆さんが「無理でしょ」という言霊を飲み込んでいるなかで、僕はヌシオンが望むなら、性格さえ直せば普通に結婚できるのではないかと思いました。35歳以降は性格は変わらないという研究もあるらしいけど、僕はヌシオンなら変われると信じています。なぜなら、荊や奴隷制度といったどんな過酷な状況であっても、諦めない心が奇跡を起こすことを『テイルズ オブ アライズ』が教えてくれたから。だれかヌシオンのアルフェンヌになってあげてください。荊を取り除いてあげてください。そして、生まれ変わったヌシオン、僕の資料をコピーしてください。
機会があれば、今度は隣の部署のシオンヌについても話そうと思う。それでは。
