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シャーリィジャクスンの“ずっとお城で暮らしてる”めっちゃ面白かった。
でも、不思議な内容で謎だらけだ!!
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“ずっとお城で暮らしてる”いいですよネ
怖さとファンシーな雰囲気がたまりません……
せっかくなので、一緒に考察してみましょう
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ナトゥメと考察?
きもー。
けど、気になるので付き合ってやるかー。
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きもーって……
ヒドイデス。
目次 閉じる
概要
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簡単に言うと、村から離れた屋敷で過ごす二人の姉妹の話。(伯父も一緒)
村人は彼女達一族を忌み嫌っており、彼女たちと伯父以外の家族は、6年前に毒殺されている。
ファンシーさとホラー要素を含んだミステリーになってます。
閉じられた城に棲む暗き魂の少女たち
少女恐怖小説の名編、美しき狂気譚あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。姉のコンスタンスといっしょに、他の家族が皆殺しにされたこの屋敷で、ずっと暮らしている……。惨劇の起きた資産家一族の生き残り。村人から忌み嫌われ、外界との交流も最低限に止める彼女たちは、独自のルールを定めて静かな生活を送っていた。しかし従兄チャールズの来訪をきっかけに、美しく病んだ箱庭世界は大きな変化をむかえる。“魔女”と称された異色作家が、超自然的要素を排し、無垢な少女の視点から人間心理に潜む悪意が引き起こす恐怖を描く代表作。/解説=桜庭一樹
オススメPOINT
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“ずっとお城で暮らしてる”のオススメなポイントをまとめました。
もう読了した人は、飛ばして、次章を読んでくれ!!
まだの人は、買ってくれ!!オススメだ!!
登場人物まとめ
主人公のメアリー・キャサリン・ブラックウッドを中心に簡単に相関図を作ってみた。
不足箇所もありますが、必要な主要人物は網羅できているはずだ。
考察(ネタバレあり)
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それでは、”ずっとお城で暮らしてる”の疑問点を考察していきましょう。
何故謎が多く、読解が難しいのか
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この話って、魅力的なんだけど、途中で謎すぎて理解できない箇所が多いんだよね。
話を難しくしている一番の要因は、メアリーの一人称で物語が構成されている点。
メアリーの繊細な感情が、織り込まれており、事実とそぐわない点が多い。
また、メアリーは幼児性が高く、常人と比べると気が狂っている。
メアリー視点で見ると、姉・コンスタンス(コニー)以外は異常な人間のように見えてしまう。
しかし、これは、メアリーが狂っているためであり、メアリーの感情に惑わされてはならない。
文章から読み取れるメアリーの特徴は以下の通り。
姉を含め、誰もメアリーを躾なかったため、邪魔な人間は毒殺すれば良いと思っているように思われる。
歌の意味は?
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メアリーとコニーをけなす歌が随所に登場しマス。
村人たちが作詞作曲なのですが、何か意味があるように感じマス
メリキャット お茶でもいかがと コニー姉さん
とんでもない 毒入りでしょうと メリキャット
メリキャット おやすみなさいと コニー姉さん
深さ十フィートの お墓の中で!
毒を入れたのは、メリキャット(メアリー)ともコニーとも取れる歌。
実際は毒を入れたのはメアリーだが、ネタバラシするまで、どちらとも考えられるので、読者をミスリードさせる罠?
単純に不気味な雰囲気を出すためだけで、特に意味はないと思われる。
ブラックウッド家を毒殺した犯人は?
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ブラックウッド家の砂糖に毒を入れて、皆殺しにした犯人はメアリーで間違いない。
そして、コニーがかばっている。
「あいつらの食べ物に毒を入れて、死ぬところを見ていてやるわ」
コンスタンスはみじろきした。葉っぱがカサカサと鳴る。「前にもそうしたように?」二人のあいだで、その話題が出たことはなかった。六年間に一度も。
「そうよ」ちょっとたってからあたしは言った。「前にもそうしたように」
上記の発言から、メアリーは六年前に毒を盛っていたことがわかる。
村人がブラックウッド家を異常に嫌っている理由
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村人たちは、何でメアリーたちブラックウッド家を嫌っているのかな?
よっぽどのことされてないと、村中から嫌われるということはないでしょう
・メアリーが異常行動を過去に起こした?
・過去ブラックウッド家が村人を虐げていた?
・メアリーの風貌が汚いから、村の外観にそぐわない。
・昔資産家だったため、鼻につく。
色々考えたが、あそこまで嫌う要因にはならないし、根拠がない。
ひぐらしのなく頃にのオヤシロ様のような、特殊地域の呪いといった伝説のようなものとして、少し非現実的で違和感があるが、そういう世界観として考えて良いでしょう。
コニーはチャールズと結婚しようとしていた?
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メアリーは大変お怒りでしたが、コニーはチャールズのことを満更でもない感じでシタ。
チャールズのタバコの火が原因に見せかけられた火事が起こるまでは……(メアリーの策略)
一時的とはいえ、コニーはチャールズと結婚しようとしていたと思われる。
「あなたもボーイフレンドを作ったほうがいい」
「ジュリアンおじさんを病院に入れたほうがいい」
などと、彼女達を引き離して、チャールズと暮らすような発言が随所に見られた。
チャールズも、コニーとの関係を何度か説明しようとしていたので、少なくともボーイフレンドには既になっていた。
コニーはメアリーを愛しているのか?
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コニーはメアリーのことを本当に愛していると思いたい。
じゃないと悲しすぎる!!
メアリー視点のため、正直コニーの本当の気持ちはわからない。
言葉では、何度も「大好きよ、メリキャット」と言ってくれたが、その言葉が本心かを判断する能力がメアリーにはなかった。
コニーの言動からして、メアリーを愛していると個人的には思う。
ただし、コニーは”みんなわたしがいけないの”という異様な後ろめたさがあるため、贖罪的な愛なのかもしれない。
彼女の後ろめたさについて、確実な記述はなかった。
①一家を毒殺したメアリーを見逃したこと。
②メアリーを甘やかした(家族がお仕置きする中、メアリーを不憫に思い食事を渡していた)ため、メアリーは一家を毒殺する事件を起こしてしまった。
のどちらかだと思う。
メアリーは虐待されていた?
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確証はありませんが、メアリーは家族から虐待を受けていたように感じマス。
メアリーは生まれながらのサイコパスではないと信じたい気持ちからの妄想かもしれませんが……
チャールズが、メアリーのお仕置きについて言及した時、すぐに逃亡していた。
メアリーはお仕置きについて、特別な恐怖を感じていると思われる。
また、ラストのコニーとの会話で、
「しつけのために、たっぷり鞭で打たれたかも」
とメアリーが言うが、脈絡なく鞭についての言及がされた。
経験談から出てきたワードではないだろうか?
他にも、メアリーが当時を回想する時、家族のみんなから沢山褒められるシーンがあるが、これは全く逆の意味と考えられる。以下は一例。
「メアリ・キャサリンには何でも欲しいものを持たせてやりましょう。最愛な娘には何でも好きなものを持たせてやらなくては」
→欲しいものを与えられなかった?
「メアリ・キャサリン、みんなお前が大好きよ」
→家族中に嫌われていた?
「最愛の娘、一番可愛い娘、メアリ・キャサリンは大切に守ってやらなくては。トマス、姉さんにお前のディナーをやりなさい。もっと食べたいだろう」
→食事を与えられてなかった? 弟のトマスに食事を渡せと言われていた?
「大好きなメアリ・キャサリンに、みんなで頭を下げるんだ」
→みんなに土下座するように強制されていた?
さらに、第九章の冒頭。
ジュリアンおじさんが死亡したことを、メアリーが考えるシーン。
おじさんは私が死んだと思っていたけど、今では自分の方が死んでしまった。最愛の娘メアリ・キャサリンに頭を下げるんだ。さもないと死んでしまうぞ。
と記述があり、曲解と思われるかもしれないが、
過去ジュリアンがメアリーに対して、「土下座しなければ、殺す」と発言していたとも読み取れる。
仮説だが、土下座強要の犯人(虐待の首謀者?)はジュリアンであるとも考えられる。
ただし、コニーは特にジュリアンのことを嫌っていないところを見ると、違うかもしれない。
あくまで想像の範囲内だが、おじさんの死亡時に上記の記述が存在する説明としては、有力だと思う。
ルシル・ライトに過去の事件を話すシーンで、コニーは逮捕後に警察に以下のようなことを言っていたと記載があった。
「そして、警察にあの人たちは死んで当然だと言ったんですわね」
やはり、コニーも家族を恨んでいた。メアリーを虐待していたためではないだろうか。
ジュリアンがメアリーが死んだと思っている理由
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ジュリアンがメアリーは孤児院で死んだという発言はビックリした。
でも、なぜ言ったのかは本当にわからない。
ジュリアンの精神異常で片付けていいのかなー
ジュリアンがメアリーが孤児院で死んだと思っている理由が全くわからない。
かなり重要なシーンだと思うのだが、さっぱり理由がわからない。
・実は、本物のメアリーは死亡していて、別人と入れ替わっている。
・ジュリアンが虐待で殺した。
・メアリーをしつけられず、あの事件以降は人間としてのメアリーは死んだという表現?
などと、考えて見たが、やはり辻褄は合わない。
この屋敷の住人が異常者であることの表現に過ぎないのだろう。
コニーは異常者か?
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メアリーの異常行動を優しく見守るコニーは、読者には癒しになってます。
でも、やっぱりコニーも異常だと思う。
メアリーが真性の(あるいは虐待による精神異常)異常者だとすれば、コニーは環境要因に左右されやすい異常者だと思う。
屋敷にこもり、メアリーとジュリアンの3人で暮らしていたコニーは、精神異常者の2人の影響を受けておかしくなっていた。人との接触を異常に怖がり、後ろめたさに悩まされ、メアリーに甘く、殺人も許容する人物となっています。
「ここは精神病院だ」
と正常なチャールズが言っている通り、屋敷には、一般人には耐えられない雰囲気があるのでしょう。
チャールズは、金を持っている美女コニーを手に入れて、メアリーとジュリアンを追い出そうとします。コニーにとっては、環境要因を正常にする唯一のチャンスでした。
実際に、チャールズに影響を受けたコニーは、あれだけ愛していると言っていたメアリーを突き放そうします。
結局、屋敷に火をつけて、チャールズのせいにするメアリーの作戦により、信頼は地に落ちますが……
「機会があれば、本当に子供を食べられるかしら」
「料理できるかどうか、わからないわ」
ラストにメアリーとコニーが2人きりとなった時の会話を見たとき、ゾッとした。
真性の異常者であるメアリーは、食料が尽きてお腹が空けば、屋敷に近づく狩りやすい子供を食べることを提案するだろう。そして、環境要因に大きく左右されるコニーは、否定することもなく、言われた通り調理するだろうし、うまく調理できれば、当たり前のように何度も繰り返すことだろう。
救いはない。
だが、周囲がどう思うと、二人は幸せであると思う。
クモは何を指しているのか?
「そうね、わたしがこわいのはクモだわ」
「ジョナスとあたしとで、姉さんにクモが近寄らないように気をつけていてあげる。ねえ、コンスタンス」あたしは言った。「あたしたち、とっても幸せね」
ラストの一文である。
クモとは、コニーが毒入り砂糖瓶を洗ったという警察での陳述と対応した表現であるのは間違いない。
メアリーにとってのクモとは、チャールズやヘレンのような、大好きなコニーを屋敷から連れ出すような存在。
コニーにとってのクモとは……やはり、メアリーではないだろうか。(あるいはメアリーの純粋な悪意)
屋敷というクモの巣に捕らえられたお姫様・コニー。砂糖瓶に毒を仕込むクモ・メアリー。
2人きりになった今、コニーがメアリーの悪意を洗い流すことはできないだろう。
まとめ
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”ずっとお城で暮らしてる”は久しぶりに良い本だったなぁ。
やっぱり、物語に謎っていうのは不可欠だよね。
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そうデスネ……
たなやしきサン、2人は幸せになったと思いマス?
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客観的には、不幸に見える。
でも、幸福というのは、個人の主観であるので、彼女たち(少なくともメアリー)にとってはハッピーエンドと言えると思う。
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そうデスネ!!やはり屋敷というのは不思議な魅力を持っています。
たなやしきサン、同じ屋敷を題材としている媒体として、本書に負けないようにブログも頑張りましょう!!
こちらの屋敷も、異常な幼女たちがいますしね!
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誰が、メアリーや!!
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コニーのポジションか!
美女だし、悪くないかも……
それでは次回もたなやしきで待ってるぞ!!
最近読んだ本では、間違いなく名作であった。
彼女達は幸福か?
というのは、メアリー視点かコニー視点かでも変わってくるでしょう。
本書の本当に怖いところは、メアリーの一人称で、メアリーの可愛らしい感情みているため、彼女の異常行動が可愛く、段々共感してしまうところだ。
彼女への共感や理解は、異常者への一歩なのかもしれない。